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出石神社(Izushi Jinja)
兵庫県豊岡市に鎮座する出石神社(いずしじんじゃ)は、『古事記』や『日本書紀』にもその名が記されている、日本でも特に古い歴史を持つ神社の一つです。
但馬國(たじまのくに)で最も社格の高い「但馬國一宮(いちのみや)」として、古くからこの地の人々の篤い信仰を集めてきました。地元では親しみを込めて「いっきゅうさん」とも呼ばれています。
主祭神である天日槍命(アメノヒボコノミコト)は、朝鮮半島から渡来し、泥海だった但N馬の地を切り拓いたとされる「国土開発の祖神」です。そのため、現在でも土木建築関係者や、事業開拓、五穀豊穣を願う多くの人々が参拝に訪れます。
境内には、今なお神聖な「禁足地」が残り、太古の信仰の姿を現代に伝える、歴史と神秘に満ちたパワースポットです。
歴史と由緒 (History and Origins)
出石神社の創建は、日本の神話時代に遡ります。社伝によれば、第11代垂仁天皇の時代(垂仁天皇三年)、新羅(しらぎ:古代朝鮮半島の国)の王子であった天日槍命(アメノヒボコノミコト)が、八種の神宝を携えて日本に渡来しました。
アメノヒボコは但馬の地を賜り、この地を開拓して多大な功績を残しました。彼が亡くなった後、その徳を慕った人々が、彼がもたらした八種の神宝を「出石八前大神(いずしやまえのおおかみ)」として祀ったのが、出石神社の起源とされています。
平安時代の807年(大同2年)に編纂された『古語拾遺(こごしゅうい)』には、すでに「大社と成れり」と記されており、当時から山陰地方有数の大社であったことがうかがえます。また、平安中期の『延喜式神名帳』では、名神大社(みょうじんたいしゃ)という最高の社格に列せられ、但馬國一宮としての地位を確立しました。
祀られている神様(祭神) (Enshrined Deities – Saijin)
- 主祭神: 天日槍命(アメノヒボコノミコト)
- 相殿神: 出石八前大神(いずしやまえのおおかみ)
- アメノヒボコが将来した八種の神宝(鏡、玉、矛など)を神格化したものとされています。
【主なご利益】
アメノヒボコが泥海だった但馬の地を切り拓き、豊かな土地に変えたという神話から、以下の篤い信仰があります。
- 国土開発・土木建築の守護
- 開運招福
- 五穀豊穣
- 事業繁栄
言い伝えと伝説 (Legends and Folklore)
出石神社には、祭神アメノヒボコにまつわる多くの伝説が残されています。
- 国土開発神話
アメノヒボコが但馬に来た当初、この地は泥海でした。彼は瀬戸の岩山(現在の豊岡市瀬戸)を切り開き、泥水を日本海へ流すことで、現在の豊岡盆地となる肥沃な大地を創り出したと伝えられています。この壮大な伝説こそが、彼が「国土開発の神」として崇められる所以です。 - 禁足地の祟り
境内の北東隅には「禁足地(きんそくち)」と呼ばれる約300坪の聖域があります。ここはアメノヒボコの御廟所(お墓)であるとも伝えられており、古来より「一木一草たりとも持ち出すことなかれ。犯せば必ず祟りあり」と言い伝えられ、現在も神職以外は立ち入ることが固く禁じられています。 - 淡路島との繋がり
アメノヒボコがもたらした神宝の一つである「小刀」が、ある時ひとりでに淡路島へ渡り、そこで神として祀られるようになったという伝説があります。これが淡路市の由良湊神社にある「出石神社」の由来とされ、両社は深い繋がりを持っています。
見どころと境内案内 (Highlights and Precinct Guide)
約6,600坪の広大な境内は、静謐な「鎮守の森」に包まれています。
- 社殿(本殿・拝殿)
現在の社殿は1914年(大正3年)に造営されたもので、荘厳な雰囲気を醸し出しています。本殿、拝殿、幣殿、神饌所は、豊岡市の指定文化財(建築物)に登録されています。 - 江戸時代の両部鳥居
参道に立つ印象的な両部鳥居(四脚鳥居)は江戸時代の作とされ、近年修復を経て美しい姿を保っています。 - 旧鳥居残欠(平安時代)
総門(桜門)の脇には、1933年(昭和8年)の河川改修工事の際に出土した、平安時代のものとみられる鳥居の基部(残欠)が安置されています。これも豊岡市の指定文化財(考古資料)であり、神社の長い歴史を物語る貴重な遺物です。 - 国指定重要文化財の脇指
神社は「脇指 銘 但州住国光(たんしゅうじゅうくにみつ)」を所蔵しており、これは国の重要文化財に指定されています。(※常時公開はされていません) - お守りと御朱印:
拝殿手前の社務所(授与所)にて、お守りや御札、御朱印をいただくことができます。
- 社務所受付時間: 午前9時00分~午後4時30分頃
- 御朱印: あり(直書き可能)
アクセス情報 (Access Information)
住所:
〒668-0204 兵庫県豊岡市出石町宮内99
公共交通機関:
- JR山陰本線「豊岡駅」または「江原駅」で下車。
- 全但(ぜんたん)バスの「出石行き」に乗車(約25~30分)。
- 「鳥居(とりい)」バス停にて下車、徒歩約7~10分。
車でのアクセス:
- 北近畿豊岡自動車道「八鹿氷ノ山(ようかひょうのせん)IC」より約10km(約15分)。
- 舞鶴若狭自動車道「福知山IC」より国道9号、国道426号経由で約40km(約60分)。
駐車場:
- 神社専用の駐車場はありませんが、近隣に出石観光用の市営駐車場(有料)が複数あります。
- 最寄りの駐車場(推奨):
- 豊岡市営 出石西の丸駐車場(普通車 約60台 / 1回400円)
- 豊岡市営 鉄砲町駐車場(普通車 約70台 / 1回400円)
- ※これらの駐車場から神社までは、城下町を散策しながら徒歩約15~20分です。
周辺の観光・食事処 (Nearby Attractions and Dining)
- 出石城跡・辰鼓楼(しんころう)
町のシンボルである時計台「辰鼓楼」と、その背後に広がる出石城跡。高台にある稲荷神社からの城下町の眺めは絶景です。 - 出石永楽館(えいらくかん)
近畿地方で現存する最古の芝居小屋。歌舞伎公演も行われるレトロな内装は見学の価値ありです。 - 出石家老屋敷
江戸時代の上級武士の屋敷を公開しており、当時の暮らしぶりを伺い知ることができます。 - 宗鏡寺(すきょうじ)
通称「沢庵寺(たくあんじ)」とも呼ばれる、沢庵和尚ゆかりの寺院。美しい庭園(鶴亀の庭)で知られます。 - 出石皿そば
出石名物といえば皿そば。町内には数十軒のそば店が軒を連ねており、独特の様式で提供されるそばの食べ比べが楽しめます。


