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身延山久遠寺(minobusankuonji)
山梨県南巨摩郡に位置する身延山久遠寺(みのぶさん くおんじ)は、日蓮宗の総本山であり、日本を代表する仏教聖地の一つです。鎌倉時代、日蓮聖人が晩年の9年間を過ごし、法華経の読誦と門弟の育成に捧げた場所として知られています。
標高1,153メートルの身延山全域が聖域とされており、四季折々の豊かな自然と、荘厳な伽藍が調和する風景は圧巻です。信仰を持つ方はもちろん、歴史ファンや、日本屈指の「しだれ桜」を求める観光客など、国内外から多くの人々が訪れる心の拠り所となっています。
歴史と由来 (History and Origins)
身延山久遠寺は、文永11年(1274年)5月、日蓮聖人(にちれんしょうにん)によって開かれました。
佐渡での流罪を終えて鎌倉に戻った日蓮聖人は、当時の幕府に三度の諫言(かんげん)を行いましたが、それが受け入れられなかったため、静かな地での研鑽を求めました。その際、波木井(はきり)郷の地頭であった波木井(南部)実長公の招きを受け、この身延の地に入山しました。
日蓮聖人は、身延山を「霊鷲山(りょうじゅせん:釈迦が法華経を説いたとされる聖地)」になぞらえ、深く愛しました。聖人の没後、その遺言通りに遺骨が奉安され、今日に至るまで日蓮宗の「魂の故郷」として仰がれています。
教え (Teachings of the Ritsu Sect)
身延山久遠寺は日蓮宗の総本山であり、『法華経(ほけきょう)』を最高の教えとしています。
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お題目: 「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」というお題目を唱えることで、どのような立場の人でも、平等に仏の智慧を授かり、成仏できると説いています。
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現世安穏: 個人の救済だけでなく、社会全体が平和で安らかになること(立正安国)を目指しています。
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本尊: 大曼荼羅(だいまんだら)を本尊とし、法華経の世界を具現化した空間で修行・祈りが行われます。
言い伝えと伝説 (Legends and Folklore)
身延山には、日蓮聖人の徳を慕う不思議な伝説が多く残っています。
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七面大明神の化身: 日蓮聖人が身延山で説法をしていた際、一人の美しい女性が現れました。聖人が彼女に正体を尋ねると、彼女は「私は身延の裏山(七面山)に住む龍神である」と明かし、法華経を守護することを誓ったと言い伝えられています。これが現在の七面山信仰の始まりです。
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孝行の心: 日蓮聖人は、身延山から遠く離れた房総(千葉)の両親を想い、身延山の山頂に登っては、故郷を眺めて追善供養を行ったとされています。このエピソードは、日本人の「親孝行」の美徳としても語り継がれています。
見どころと境内案内 (Highlights and Precinct Guide)
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三門(山門): 日本三大門の一つに数えられることもある、巨大な二重門です。ここから聖域が始まります。
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菩提梯(ぼだいてい): 三門から本堂へと続く、287段の石段。高低差は約104メートルあり、登り切れば悟り(菩提)に至ると言われています。体力に自信のない方は、脇にある女坂や、乗り合いバス・ロープウェイの利用も可能です。
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大本堂: 一度に2,500人を収容できる荘厳な建物。天井には加山又造画伯による巨大な「墨龍」が描かれており、その迫力に圧倒されます。
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五重塔: 明治時代の火災により焼失しましたが、2009年に400年ぶりの復元として再建されました。伝統的な木造建築技法が駆使された、美しいランドマークです。
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しだれ桜: 樹齢400年を超える2本の巨木をはじめ、境内各地にしだれ桜が咲き誇ります。「日本さくら名所100選」にも選ばれており、春には全国から参拝客が訪れます。
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奥之院思親閣: 身延山ロープウェイで山頂へ。日蓮聖人が両親を偲んだ場所であり、晴れた日には富士山や駿河湾を一望できる絶景スポットです。
アクセス情報 (Access Information)
住所:
〒409-2593 山梨県南巨摩郡身延町身延3567
公共交通機関
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JR身延線:
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「身延駅」下車。
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路線バス:
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身延駅前より「身延山行き」バスに乗車(約12分)。終点「身延山」バス停下車、徒歩すぐ。
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高速バス:
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新宿(バスタ新宿)から身延山直通の高速バスが運行されています(約3時間30分)。
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車でのアクセス
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中部横断自動車道: 「身延下部温泉IC」より国道52号線を経由して約15分。
駐車場:
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せいしん駐車場(有料:普通車約100台、大型可)
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総門付近や仲町など周辺に民間の駐車場あり。 ※桜のシーズンや祭礼時は交通規制が行われるため、公共交通機関の利用を強く推奨します。
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周辺の観光・食事処 (Nearby Attractions and Dining)
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身延山ロープウェイ: 久遠寺本堂から山頂の奥之院を結びます。全長1,665m、関東屈指のパノラマビューを楽しめます。
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身延の宿坊: 身延山内には30以上の「宿坊」があり、宿泊や精進料理体験が可能です。歴史ある建物で静謐な時間を過ごせます。
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身延まんじゅう(栄昇堂など): 身延の名物といえば「身延まんじゅう」。薄皮に甘さ控えめの餡が詰まった、お土産に欠かせない一品です。
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道の駅 みのぶ : 車での参拝なら立ち寄りたいスポット。広大な敷地にバラ園や特産品販売所、レストランが併設されています。
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武州屋(椎茸・湯葉): 身延特産の「身延湯葉」や、良質な乾燥椎茸などを扱う土産物店。地域の食文化を感じられます。


