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金刀比羅宮(Kotohiragu)

785段の石段を越えて掴む幸福。歴史、ご利益、参拝ルートを徹底解説

香川県仲多度郡琴平町、象頭山(ぞうずさん)の中腹に鎮座する金刀比羅宮(ことひらぐう)は、古くから「さぬきのこんぴらさん」の愛称で親しまれる、日本を代表する神社の一つです。

この神社の最大の特徴は、参道口から御本宮まで続く785段、さらに奥社までは合計1,368段にも及ぶ長い石段です。 決して楽な道のりではありませんが、石段を登りきって本宮に辿り着いた時の達成感と、眼下に広がる讃岐平野の絶景は格別です。古くから海上交通の守り神として信仰を集め、今も年間多くの参拝者が「幸福」を求めてこの地を訪れます。

歴史と由緒 (History and Origins)

金刀比羅宮の歴史は古く、その起源には諸説ありますが、かつては「金毘羅大権現(こんぴらだいごんげん)」と呼ばれ、神仏習合の霊場として栄えました。 「金毘羅(クンビーラ)」とは、サンスクリット語でワニを神格化したガンジス川の神様を指し、これが水運・海運の守り神としての性格に繋がったと言われています。

江戸時代には、お伊勢参りと並んで「一生に一度はこんぴら参り」と言われるほど庶民の間で信仰が爆発的に広まりました。当時、自由な旅行が禁止されていた中でも、神社への参拝は例外的に許されており、全国から多くの旅人がこの長い石段を目指しました。明治時代の神仏分離により、現在の「金刀比羅宮」となり、大物主神を主祭神として祀るようになりました。

祀られている神様(祭神) (Enshrined Deities – Saijin)

  • 大物主神(オオモノヌシノカミ)
    • 神格: 国造りの神、農業・殖産・医薬・海上守護の神。
    • 日本神話において国造りを行った大国主神(オオクニヌシ)の「和魂(にぎみたま)」とされ、万能の力を持つ神様です。特にここでは「海の神様」としての性格が強く、漁師や船員、造船関係者からの崇敬が極めて篤いのが特徴です。
  • 崇徳天皇(ストクテンノウ)
    • 神格: 第75代天皇。保元の乱に敗れて讃岐国(香川県)へ配流となり、この地で崩御されました。その御霊をお慰めするために合祀されています。

【主なご利益】 海上安全、大漁満足が有名ですが、そこから転じて五穀豊穣、商売繁盛、病気平癒など、生活全般の幸福を守る神様として信仰されています。

言い伝えと伝説 (Legends and Folklore)

「こんぴら狗(いぬ)」の代参 江戸時代、こんぴら参りは庶民の夢でしたが、遠方で旅費がない、あるいは病気で足腰が弱いなどの理由で自分で行けない人も多くいました。そこで行われたのが「代参(だいさん)」です。 時には、飼い主の代わりに「犬」が参拝することもありました。首に「こんぴら参り」と書いた木札と、道中の食費や初穂料を入れた袋をぶら下げた犬は、旅人から旅人へとリレー形式で連れられ、見事にこんぴらさんへ辿り着き、また飼い主の元へ帰ったと言われています。 この健気な犬たちは「こんぴら狗」と呼ばれ、現在も境内の銅像やおみくじのデザインとして愛されています。

見どころと境内案内 (Highlights and Precinct Guide)

  • 785段の石段と大門(おおもん)
    • 参道の入り口から365段目を登りきると、神域の総門である「大門」が現れます。ここから振り返る景色も美しいですが、まだまだ中間地点です。
  • 五人百姓(ごにんびゃくしょう)
    • 大門をくぐってすぐの場所で、大きな白い傘を広げて飴を売る5軒のお店があります。彼らはかつて神社の神事に貢献した功績により、特別に境内での営業を許された「五人百姓」の子孫です。ここで売られている「加美代飴(かみよあめ)」は、ほんのり柚子風味の名物です。
  • 旭社(あさひしゃ / 重要文化財)
    • 628段目にある、総ケヤキ造りの豪華絢爛な社殿。あまりの立派さに、江戸時代には多くの人がここを本宮と間違えて参拝して帰ってしまったという逸話があるほどです(※参拝順路としては、帰りに参拝するのが習わしです)。
  • 御本宮(ごほんぐう)と展望台
    • 785段を登りきると、ついに御本宮に到着です。檜皮葺(ひわだぶき)の社殿でお参りをした後は、すぐ横の展望台へ。讃岐富士(飯野山)や瀬戸大橋まで見渡せる絶景が、疲れを吹き飛ばしてくれます。
  • 幸福の黄色いお守り
    • 御本宮の神札授与所でしか手に入らない、鮮やかなウコン色の「幸福の黄色いお守り」。セットで授与される「ミニこんぴら狗」のストラップも人気です。
  • 奥社(厳魂神社)
    • 体力に自信のある方は、本宮からさらに583段(合計1,368段)登った「奥社(厳魂神社)」へ。ここには戦国時代の天狗伝説も残るパワースポットがあり、本宮とはまた違う静謐な空気が流れています。

アクセス情報 (Access Information)

住所: 〒766-8501 香川県仲多度郡琴平町892-1

公共交通機関:

  • JR土讃線「琴平駅」 下車、徒歩約20分。
  • 高松琴平電気鉄道(琴電)「琴電琴平駅」 下車、徒歩約15分。
    • 注: 上記はあくまで「石段の登り口(1段目)」までの時間です。そこから本宮までは、足の速さによりますがさらに30〜45分程度かかります。

車でのアクセス:

  • 高松自動車道「善通寺IC」より約15分。
  • 駐車場: 神社直営の駐車場はありませんが、参道周辺に町営駐車場や民間駐車場が多数あります(有料)。

【重要:足腰に不安がある方へ】

  • 参拝登山バス(要予約・有料):
    • 大門近く(365段目付近)や、さらに上の資生堂パーラー「神椿」(500段目付近)まで行けるバスやタクシーが利用できる場合があります。これを利用すれば、本宮までの階段を大幅にショートカットできます。事前にタクシー会社や「神椿」へお問い合わせください。
    • 補足: かつて名物だった「石段かご」は、2020年に廃業しています。

周辺の観光・食事処 (Nearby Attractions and Dining)

参拝後(下山後)は、門前町で香川の名物を楽しみましょう。

  1. 讃岐うどん
    • 香川県といえばうどん。参道周辺には「こんぴらうどん」や、うどん作り体験ができる「中野うどん学校」など、有名店がひしめき合っています。参拝後のエネルギー補給に最適です。
  2. 旧金毘羅大芝居「金丸座」(かなまるざ)
    • 参道から徒歩圏内にある、日本最古の芝居小屋(重要文化財)。江戸時代の歌舞伎劇場の雰囲気がそのまま残されており、舞台裏や奈落(床下)を見学することができます。
  3. 灸まん(きゅうまん)
    • 琴平を代表する銘菓。お灸の形をした黄身餡のお饅頭で、お茶請けにぴったりです。
  4. 金陵の郷(きんりょうのさと)
    • 参道口にある酒蔵資料館。こんぴらの御神酒を造る「金陵」の歴史を学び、試飲や購入が楽しめます。楠の御神木の下で休憩できる広場もあります。

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