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久能山東照宮(Kunozan Toshogu)

久能山東照宮(くのうざんとうしょうぐう)は、江戸幕府を開いた徳川家康公(東照大権現)を御祭神としてお祀りする、全国の東照宮の始まりの場所です。

元和2年(1616年)、家康公は75歳でその生涯を終える際、「遺体は久能山に納めよ」との遺命を残されました。その御遺命に基づき、二代将軍・秀忠公の命によって創建されたのがこの久能山東照宮です。

日光東照宮が創建されるよりも先に、家康公の御魂が鎮められた聖地であり、当時の最高の技術と芸術の粋を集めて建てられた「権現造(ごんげんづくり)」の御社殿は、平成22年(2010年)に国宝に指定されました。

駿河湾を見下ろす久能山の山頂に位置し、日本平からロープウェイで渡る絶景のアクセスも魅力の一つ。歴史ファン、建築美を愛する方、そして国家安泰や出世開運を願うすべての人々にとって、一度は訪れるべき特別な神社です。

歴史と由緒 (History and Origins)

久能山の歴史は古く、飛鳥時代にまで遡ります。推古天皇の御代に久能寺(くのうじ)が建立され、山全体が信仰の対象となっていました。

戦国時代に入ると、その地形が要害であることに着目した武田信玄が城を築き、「久能城」としました。武田氏滅亡後は徳川家の所有となります。

最大の転機は、元和2年(1616年)4月17日。駿府城で徳川家康公が薨去(こうきょ)されます。家康公は「遺体は駿河国の久能山に葬り、江戸の増上寺で葬儀を行い、三河国の大樹寺に位牌を納め、一周忌が過ぎたのち、下野の日光山に小堂を建てて勧請(かんじょう)せよ」と遺言しました。

この御遺命に従い、御遺体はその日のうちに久能山へと運ばれ、埋葬されました。そして、二代将軍・徳川秀忠公は、当代随一の工匠であった中井正清(なかい まさきよ)を棟梁に命じ、わずか1年7ヶ月という驚異的な速さで壮麗な社殿を造営させました。これが久能山東照宮の始まりです。

のちに三代将軍・家光公によって日光東照宮が大改築される際、この久能山東照宮の社殿がその手本とされました。

祀られている神様(祭神) (Enshrined Deities – Saijin)

  • 主祭神: 徳川家康公(とくがわいえやすこう)
  • 御神号: 東照大権現(とうしょうだいごんげん)

徳川家康公は、戦国の乱世を終結させ、260年以上にわたる江戸時代の平和な世の礎を築いた偉人です。その御功績から、平和の守護神、国家鎮護の神として崇められています。

【主なご利益】

家康公が天下統一を成し遂げたこと、75歳という当時としては非常に長寿であったこと、学問や武芸にも秀でていたことなどから、そのご利益は多岐にわたります。

  • 開運厄除・必勝祈願: 人生のあらゆる勝負事や困難に打ち勝つ力
  • 出世成功・商売繁盛: 天下人となったことからの上昇運
  • 健康長寿・病気平癒: 健康に留意し長寿を全うした御神徳
  • 学業成就: 優れた学者でもあった家康公の知恵

言い伝えと伝説 (Legends and Folklore)

西を向く神廟

家康公の御遺体が埋葬されている「神廟(しんびょう)」は、社殿の背後、さらに石段を登った先にあります。この神廟の宝塔は、厳かに西を向いて建てられています。

これは、家康公が生まれた故郷である三河(現在の愛知県東部)や、長きにわたり日本の中心であった京の都を見守っているためとも、あるいは豊臣家が治めた西国に睨みを利かせているためとも伝えられています。

見どころと境内案内 (Highlights and Precinct Guide)

  • 国宝 御社殿(本殿・石の間・拝殿)
    「権現造」と呼ばれる建築様式の原型であり、最も重要な建物です。本殿と拝殿を「石の間」と呼ばれる空間で繋ぐ構造になっています。総漆塗りの上に施された極彩色の彫刻、金箔、精緻な装飾は、まさに江戸初期の技術の結晶であり、息をのむ美しさです。
  • 重要文化財 楼門(ろうもん)
    境内へと入る朱塗りの壮麗な門。中央に掲げられた「東照大権現」の扁額(へんがく)は、後水尾天皇(ごみずのおてんのう)の宸筆(しんぴつ=天皇直筆の書)であり、高い格式を示しています。
  • 重要文化財 神廟(しんびょう)
    家康公の御遺体を埋葬する場所。家康公の遺命により西向きに建てられた石造りの宝塔があり、境内の中でも最も神聖な場所の一つです。
  • 表参道石段
    麓の「久能山下」から社殿まで続く、1159段の石段。「いちいちご苦労さん」の語呂合わせで知られ、この石段を登って参拝すれば、より一層のご利益があると言われています。

    • 現在は日本平ロープウェイでの参拝が一般的ですが、体力に自信のある方はぜひ挑戦してみてください。
  • 日本平ロープウェイ
    日本平山頂と久能山東照宮を結ぶロープウェイ。約5分間の空中散歩では、眼下に広がる駿河湾や、屏風谷(びょうぶだに)の絶景を楽しむことができます。
  • 久能山東照宮博物館
    徳川家康公が実際に使用した甲冑(重要文化財「歯朶具足(しだぐそく)」)や太刀、スペイン国王から贈られた洋時計(家康公の時計)など、徳川家ゆかりの貴重な宝物約2,000点を収蔵・展示しています。(※拝観料とは別途入館料が必要です)
  • 御朱印・お守り
    国宝指定を記念した御朱印や、家康公の甲冑を模した「出世守」、健康長寿の「印籠守」などが人気です。

アクセス情報 (Access Information)

住所: 〒422-8011 静岡県静岡市駿河区根古屋390

① 日本平ロープウェイを利用する場合(推奨)

  • 公共交通機関:
    • JR「静岡駅」北口バスターミナル(11番のりば)より、しずてつジャストライン「日本平ロープウェイ線」乗車(約50分)、「日本平ロープウェイ」バス停下車。
    • JR「東静岡駅」南口より、無料シャトルバス運行(土日祝のみ、詳細は要確認)。
    • 日本平ロープウェイ乗車(約5分)
  • 車でのアクセス:
    • 東名高速道路「静岡IC」または「清水IC」より約40分。
    • 新東名高速道路「新静岡IC」より約40分。
    • 日本平久能山スマートIC(ETC専用)より約20分。
    • 駐車場: 日本平山頂に無料駐車場(約200台)あり。

② 久能山下の石段を利用する場合

  • 公共交通機関:
    • JR「静岡駅」北口バスターミナル(14番のりば)より、しずてつジャストライン「石田街道線(久能山下 行)」乗車(約50分)、終点「久能山下」バス停下車。
    • バス停より徒歩(表参道石段1159段、所要時間 約20分~30分)。
  • 車でのアクセス:
    • 海岸線(国道150号線)沿い。「久能山下」バス停付近に民間の有料駐車場あり。

周辺の観光・食事処 (Nearby Attractions and Dining)

  1. 日本平(日本平夢テラス)
    ロープウェイの乗り場がある日本平山頂には、2018年にオープンした展望施設「日本平夢テラス」があります。富士山、駿河湾、三保の松原、静岡市街を一望できるパノラマは必見です。
  2. 三保の松原(みほのまつばら)
    世界文化遺産「富士山」の構成資産の一つ。羽衣伝説で知られる景勝地で、青い海と松林の緑、そして雄大な富士山のコントラストが美しい場所です。
  3. 清水魚市場 河岸の市(かしのいち)
    清水港で水揚げされた新鮮な海の幸が集まる市場。「まぐろ館」と「いちば館」があり、新鮮な海鮮丼や寿司を味わえる飲食店が多数軒を連ねています。
  4. 登呂遺跡(とろいせき)
    弥生時代の水田稲作文化を伝える国の特別史跡。復元された住居や高床式倉庫を見学でき、歴史学習の場としても人気です。
  5. 炭焼きレストランさわやか
    静岡県内にしかない超人気のファミリーレストラン。名物の「げんこつハンバーグ」は、参拝後のランチやディナーにおすすめです。

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