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阿蘇神社(Aso jinja)
熊本県阿蘇市に鎮座する「阿蘇神社」は、約2300年前に創建されたと伝わる、全国に約500社ある阿蘇神社の総本社です。阿蘇開拓の祖である「健磐龍命(たけいわたつのみこと)」をはじめとする十二神を祀り、古くから阿蘇山信仰の中心地として篤い崇敬を集めてきました。
2016年の熊本地震では、国の重要文化財である楼門や拝殿が倒壊するなど甚大な被害を受けましたが、全国からの支援により見事に復興を遂げました。特に、2023年12月に再建された「日本三大楼門」の一つに数えられる壮麗な楼門は、復興のシンボルとして多くの参拝者を迎えています。
全国的にも珍しい「横参道」や、縁結びの「高砂の松」など見どころも多く、阿蘇の雄大な自然と共に、日本の神話と歴史、そして人々の復興への強い意志を感じられる特別なパワースポットです。
歴史と由緒 (History and Origins)
阿蘇神社の創建は、第7代孝霊天皇の御代(紀元前282年頃)に遡ると伝えられています。主祭神である健磐龍命の孫にあたる速瓶玉命(はやみかたまのみこと)が、この地に祖父の神霊を祀ったのが始まりとされます。
平安時代には『延喜式神名帳』に記載される「名神大社」として、また肥後国(現在の熊本県)で最も社格の高い「一の宮」として、朝廷からも深く崇敬されました。中世以降は、阿蘇山の広大な地域を治めた阿蘇大宮司家(阿蘇氏)によって手厚く護られ、阿蘇山信仰の中心として栄えました。
2016年4月の熊本地震では、拝殿、そして江戸時代末期に建てられた壮大な二層式の楼門(国の重要文化財)が全壊する未曾有の被害を受けました。しかし、氏子や崇敬者、国内外からの多くの寄付と尽力により、2021年3月に拝殿が、そして2023年12月7日には楼門が約7年半の歳月を経て、元の壮麗な姿に復旧しました。この復興の歩み自体が、現代における神社の歴史の新たな1ページとなっています。
祀られている神様(祭神) (Enshrined Deities – Saijin)
阿蘇神社には、主祭神である健磐龍命(たけいわたつのみこと)とその家族神、あわせて十二神が祀られています。これらの神々は「阿蘇十二明神」と総称されます。
- 健磐龍命(たけいわたつのみこと):
初代・神武天皇の孫にあたります。阿蘇の地に降り立ち、湖であった阿蘇のカルデラを切り開いて田畑を造り、人々に農耕を伝えたとされる阿蘇開拓の神様です。その神徳から、五穀豊穣、家内安全、厄除けなど、生活全般を守護する神として信仰されています。 - 阿蘇都媛命(あそつひめのみこと):
健磐龍命の妃(妻)。夫神と共に阿蘇の開拓に尽力しました。 - 速瓶玉命(はやみかたまのみこと):
健磐龍命の子であり、阿蘇神社の初代大宮司とされます。
これら三柱をはじめとする十二神が祀られているため、阿蘇神社は非常に多岐にわたるご利益(諸願成就)を授けてくださる神社として知られています。
言い伝えと伝説 (Legends and Folklore)
阿蘇神社と主祭神・健磐龍命には、阿蘇の雄大な自然を舞台にした多くの伝説が残されています。
- 阿蘇の湖と「蹴破り(けやぶり)」伝説
太古の昔、阿蘇のカルデラは巨大な湖でした。健磐龍命は、この水を抜き、人々が住める土地にしようと考え、外輪山の一角を蹴り破りました。この時、水と共に流れ出ようとした大きなナマズがおり、健磐龍命が「(流れ出るのを)止まれ」と叫んだ場所が「(ナマズが)留まった」ことから「立野(たての)」という地名になったと伝えられています。この蹴り破った場所が、現在の阿蘇カルデラの唯一の切れ目である「立野峡谷」であるとされています。 - 草部吉見(くさかべよしみ)の神
健磐龍命が阿蘇に来る前からこの地を守っていたとされる神様(草部吉見神)が、健磐龍命に土地を譲ることを拒みました。そこで健磐龍命は弓矢でこの神を射ましたが、矢は神の股をかすめました。これにちなみ、草部吉見神は「股の神様」、特に女性の病気平癒や安産にご利益がある神として信仰されるようになったという言い伝えがあります。
見どころと境内案内 (Highlights and Precinct Guide)
広大な境内には、歴史と神話、そして復興の力強さを感じられる見どころが点在しています。
- 楼門(ろうもん)
神社の象徴であり、国の重要文化財。高さ約18メートルを誇る壮大な二層式の門は、「日本三大楼門」の一つに数えられます。熊本地震で全壊しましたが、2023年12月に見事に再建されました。細部にわたる緻密な装飾と、新しくも威厳に満ちた姿は必見です。 - 拝殿(はいでん)
楼門の奥に位置し、神々を拝むための社殿。楼門に先立ち2021年に再建されました。阿蘇の木材も使用された美しい白木造りで、復興の第一歩を象徴する清らかな空間です。 - 横参道(よこさんどう)
阿蘇神社の参道は、拝殿や楼門に対して平行に、東西に伸びています。これは全国的にも非常に珍しい配置で、一説には阿蘇山の火山活動(火口)を避けるためとも、あるいは参道が宮地(みやじ)の町と一体化しているためとも言われます。 - 高砂の松(たかさごのまつ)
縁結びのパワースポットとして知られるご神木。この松の周りを、女性は右回りに2周、男性は左回りに2周すると、良縁に恵まれるという言い伝えがあります。 - 願かけ石(ねがいかけいし)
古来より神聖な石として伝わる「神石(かみいし)」。心の中で願い事を3回唱え、この石を撫でると願いが叶うとされています。 - 神の泉(かみのいずみ)
阿蘇は「水の国」と呼ばれるほど湧水が豊かです。境内にあるこの「神の泉」の水は、古くから不老長寿の水として珍重されてきました。飲むことができ、多くの人がこのご神水を汲みに訪れます。 - 御朱印・お守り
復興した楼門がデザインされた御朱印帳や、健磐龍命の弓矢にちなんだ厄除けのお守りなどが人気です。
アクセス情報 (Access Information)
- 住所:〒869-2612 熊本県阿蘇市一の宮町宮地3083-1
- 公共交通機関
- JR豊肥本線「宮地駅」より徒歩約15分
- 阿蘇くまもと空港からバス(空港ライナー)で「肥後大津駅」へ(約15分)、JR豊肥本線に乗り換え「宮地駅」下車(約50分)
- 車でのアクセス
- 九州自動車道「熊本IC」より国道57号線経由で約60分
- 阿蘇くまもと空港より国道57号線経由で約50分
- 駐車場
- 阿蘇神社第1駐車場・第2駐車場: 最初の30分無料、以降1時間ごと100円
- 阿蘇市一の宮中央駐車場(神社正面): 最初の3時間300円、以降1時間ごと100円
- (その他、近隣に無料・有料駐車場あり)
周辺の観光・食事処 (Nearby Attractions and Dining)
- 門前町商店街(水基めぐり)
阿蘇神社の横参道に続く商店街。ここには「水基(みずき)」と呼ばれる湧水スポットが点在しており、「水基めぐり」を楽しめます。阿蘇の清らかな水を使ったスイーツやグルメ、馬肉(馬刺し)コロッケなどの食べ歩きも人気です。 - 阿蘇山(中岳火口)
阿蘇のシンボルである活火山。噴火警戒レベルによりますが、火口見学エリアまで行けば、地球の息吹を間近に感じることができます。(※訪問前に必ず最新の火山情報をご確認ください) - 草千里ヶ浜(くさせんりがはま)
中岳の麓に広がる大草原。雨水が溜まってできた池や、放牧された馬が草を食む風景は、阿蘇を代表する牧歌的な絶景スポットです。 - 道の駅 阿蘇
JR阿蘇駅のすぐ隣にある道の駅。あか牛や高菜など、阿蘇の特産品や新鮮な野菜、お土産が揃います。 - 内牧温泉(うちのまきおんせん)
阿蘇神社から車で約10分ほどの場所にある温泉街。多くの旅館や日帰り入浴施設があり、参拝後の疲れを癒すのに最適です。

