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埼玉県秩父市大野原に位置する「飛渕山 龍石寺(ひえんざん りゅうせきじ)」は、秩父三十四観音霊場の第19番札所です。

このお寺の最大の特徴は、荒川のすぐ近くにある「龍頭石(りゅうとうせき)」と呼ばれる巨大な一枚岩(岩盤)の真上に本堂が建てられている点です。古くから、大自然が作り出した巨石への信仰(巨石信仰・山岳信仰)と仏教が深く結びついた聖地として知られてきました。

境内には、雨乞いにまつわる神秘的な龍神伝説や、少し珍しい仏像が遺されており、秩父のダイナミックな地質(ジオパーク)の魅力と深い歴史を同時に体感できる、非常に見応えのある名刹です。

 

歴史と由来 (History and Origins)

龍石寺の開創の時期は室町時代、あるいはそれ以前にまで遡ると伝えられています。一説には、第10番札所「大慈寺」を再興した高僧・東雄朔方(とうゆうさくほう)禅師がこの地を訪れ、巨岩の持つ霊気に打たれてお堂を整備したともいわれています。

かつてこの地は、荒川の激流が岩を削り、深い淵(ふち)を形成していたことから「飛渕(ひえん)」と呼ばれており、それが山号の由来となりました。

現在の本堂(観音堂)は江戸時代後期の建築で、明治時代の秩父大火などの災害を免れ、奇跡的に往時の姿を現代に留めています。自然の地形をそのまま活かしてお堂を建てるという、日本古来の優れた建築技術と信仰の形を今に伝える貴重な史跡です。

 

教え (Teachings of the Ritsu Sect)

龍石寺は、禅宗の一つである曹洞宗(そうとうしゅう)に属しています。

曹洞宗の教え:今ここにある自然と一体になる
特別な理屈にとらわれず、ただひたすらに座禅を行う(只管打坐)ことで、自分自身の内側にある仏の心を見つめます。龍石寺のように、剝き出しの巨岩や木々といった大自然に囲まれた環境の中で祈りを捧げることは、万物の中に仏の命を見る禅の精神とも深く共鳴しています。

本尊は「千手観世音菩薩(せんじゅかんぜおんぼさつ)」です。
室町時代の作とされる木彫りの坐像で、千の手と千の眼であらゆる人々の苦しみや悩みを見落とさず、どんな状況からでも救い上げてくださるという絶大な慈悲の力を持っています。巨岩の強いエネルギーに守られた本尊の前で手を合わせることで、力強いご利益を授かることができると信じられています。

 

言い伝えと伝説 (Legends and Folklore)

龍石寺の名前の由来となった、ドラマチックな「龍神伝説」が今も語り継がれています。

昔、この秩父地方が何ヶ月も雨が降らない凄まじい大日照りに見舞われたことがありました。作物は枯れ果て、川の水も干からび、人々が飢えと渇きで苦しんでいた時、一人の徳の高い僧侶がこの巨大な岩盤の上で必死の雨乞いの祈祷を行いました。 数日間にわたる命がけの祈りの末、にわかに天が曇り、雷鳴が轟いたかと思うと、なんと足元の巨岩が真っ二つに割れ、その裂け目から一匹の巨大な龍が天へと昇っていきました。 龍が天に達すると、秩父の山々に恵みの雨が降り注ぎ、大地は潤いを取り戻しました。その後、龍はふたたびこの岩へと戻り、そのまま石(龍頭石)となってお寺を守る存在になったといいます。

この伝説から「龍石寺」と名付けられ、今も「開運招福」「災難除け」「心願成就」の強いパワースポットとして信仰されています。

 

見どころと境内案内 (Highlights and Precinct Guide)

  • 岩盤の上に建つ「本堂(観音堂)」 境内に足を踏み入れると、地面一帯が巨大な岩(三波川変成岩)の段丘になっていることに驚かされます。本堂はその岩肌を削ることなく、凹凸に合わせて柱の長さを調節する「礎石(そせき)建て」という技法で造られており、まさに自然と建築の融合美を間近で見ることができます。

  • 三途の川の番人「奪衣婆(だつえば)尊」 本堂のすぐ隣には、人が亡くなった後に三途の川で衣服を剥ぎ取るとされる「奪衣婆(だつえば)」の大きな石像が祀られています。少し怖い見た目をしていますが、ここでは「子供の咳(せき)を止めてくれる仏様」、あるいは「悪い病気を追い払ってくれる神様」として、地元の人々から優しく信仰されています。

  • 元三大師(がんざんだいし)尊 境内のお堂には、厄除けの力が非常に強いとされる比叡山の高僧・元三大師も祀られており、おみくじの元祖としても知られる大師の功徳を慕う参拝者が訪れます。

  • よく手入れされた清々しい境内 無住の時期もありましたが、現在は境内が美しく整備されており、四季折々の野花が岩肌に彩りを添えています。本堂の裏手に回ると、岩盤のダイナミックな広がりをより近くで観察できます。

 

アクセス情報 (Access Information)

住所:

〒368-0056 埼玉県秩父市大野原1993

公共交通機関:

  • 秩父鉄道「大野原(おおのはら)駅」から徒歩約15〜18分。
    • (第18番札所「神門寺」から徒歩で巡礼する場合、北西へ向かって約15〜20分、約1.2kmの平坦な道のりです)

車でのアクセス:

  • 関越自動車道「花園IC」から国道140号(皆野寄居有料道路経由)で約40分。

駐車場:

  • 境内に参拝者用の無料駐車場があります(約10台分)。お寺の入り口(山門の手前)からそのまま車で進入できます。

 

周辺の観光・食事処 (Nearby Attractions and Dining)

秩父札所第20番 法王山 岩之上堂(いわのうえどう): 龍石寺の次に巡る第20番札所。龍石寺から南西へ徒歩約20分ほどの場所にあり、荒川の切り立った崖(河岸段丘)の上に建つ、秩父札所最古の江戸時代初期の建築を残す見事なお堂です。

秩父聖地公園 :龍石寺の東側に広がる、緑に囲まれた広大な公園。春には美しい桜並木が広がり、巡礼や散策の合間にベンチでゆっくりと休憩するのに最適なスポットです。

荒川の河岸段丘と大野原の自然 :龍石寺のすぐ裏手周辺は、秩父ジオパークを構成するダイナミックな河岸段丘が観察できるエリアです。荒川のせせらぎを聞きながら、太古の地球の息吹を感じるウォーキングが楽しめます。

そば処・食事処 最寄り駅である大野原駅の周辺や、近くを通る国道沿いには、ボリューム満点の「わらじかつ丼」や、秩父の美味しい水で打たれた「手打ち蕎麦」を提供する地元に愛される食堂が点在しており、参拝後のランチにぴったりです。

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