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江戸東京博物館(Edo-Tokyo Museum)
圧倒的なスケールで蘇る「江戸ゾーン」
東京・両国。相撲の聖地として知られるこの街に、ひときわ異彩を放つ巨大な建造物がそびえ立っています。高床式の倉庫をイメージしたユニークな外観を持つその建物こそが、「江戸東京博物館」です。
1993年の開館以来、国内外から多くの観光客を魅了してきたこの博物館は、単に歴史資料を展示するだけの場所ではありません。一歩足を踏み入れれば、そこはまるでタイムマシンの入り口。徳川家康が江戸に入府してから現代に至るまでの約400年の歴史と文化を、五感を使って「体験」できるエンターテインメント空間が広がっています。
現在、大規模改修工事のため休館中(2026年3月31日リニューアルオープン予定)ですが、リニューアルに向けて期待が高まる今だからこそ、その色褪せない魅力と、私たちが愛してやまない「江戸東京博物館」の世界観を改めて深掘りしていきましょう。
※本記事の情報は休館前の展示内容に基づきます。リニューアル後の展示は変更になる可能性があります。
架け橋を渡り、江戸の世界へ
入口の「日本橋」は、江戸時代のメインストリートの起点。橋を渡るという行為そのものが、現代から江戸時代へと意識を切り替える儀式のように感じられます。檜(ひのき)の香りが漂う橋の上から見下ろすと、そこには広大な「江戸ゾーン」が広がっています。
橋を渡った先には、「寛永の町人地」や「大名屋敷」の壮大な模型が展示されています。特に注目すべきは、当時の賑わいを再現したジオラマの精巧さです。一人ひとりの人形の表情、着物の柄、商いをする姿などが驚くほど細かく作り込まれており、備え付けの双眼鏡で覗き込むと、まるで当時の人々の話し声が聞こえてきそうな臨場感があります。
江戸ゾーンのハイライトの一つが、実物大で復元された芝居小屋「中村座」の正面部分です。極彩色で彩られた華やかなファサードは、当時の江戸っ子たちがどれほど歌舞伎に熱狂していたかを物語っています。
また、長屋の展示では、当時の庶民の狭くとも工夫に満ちた暮らしぶりを垣間見ることができます。実際に靴を脱いで上がれる展示もあり、畳の感触や部屋の広さを肌で感じることで、歴史の教科書だけでは分からない「生活のリアリティ」を体感できるのが大きな魅力です。体験コーナーでは「千両箱」の重さを持ち上げて体験できるなど、子供から大人まで楽しめる仕掛けが随所に施されています。
近代化の息吹を感じる「東京ゾーン」
日本橋を降りて進むと、時代は明治、大正、昭和へと移り変わります。「東京ゾーン」では、文明開化によって急速に西洋化していく街の様子や、関東大震災、東京大空襲という二度の壊滅的な被害から力強く復興していく東京の姿が描かれています。
明治時代の銀座煉瓦街の模型や、かつて浅草にそびえ立っていた12階建ての凌雲閣(通称:浅草十二階)の模型は、近代化へのエネルギーを象徴しています。ガス灯が灯り、人力車が行き交うレトロでモダンな雰囲気は、現代の東京とはまた違ったロマンを感じさせます。
昭和エリアで特に人気が高いのが、戦後の高度経済成長期における団地の一室や、昭和30年代~40年代の一般家庭の様子を再現した展示です。ちゃぶ台、黒電話、初期の電気冷蔵庫や洗濯機。年配の方には懐かしく、若い世代には新鮮に映る「三丁目の夕日」のような世界が広がっています。 給食のサンプルや当時の雑誌、おもちゃなどの展示資料も豊富で、世代を超えて会話が弾むエリアと言えるでしょう。
建築自体がアート作品
展示物だけでなく、博物館の建物そのものも一つの巨大な作品です。 日本のメタボリズム建築を牽引した建築家・菊竹清訓氏による設計で、高さ約62メートルという威容を誇ります。高床式の構造は、ユニークな景観を作り出すだけでなく、地上部分に広場(江戸東京ひろば)を設けることで、地域のイベントスペースとしても機能させています。 巨大な4本の柱で支えられた未来的かつ日本的なそのフォルムは、両国のランドマークとして圧倒的な存在感を放っており、建築ファンにとっても必見のスポットです。
2025年度のリニューアルに向けて
現在、江戸東京博物館は設備の老朽化に伴う大規模改修工事を行っています。再オープンは2025年度(令和7年度)中を予定しており、展示内容も一部刷新されることが予想されます。 しかし、「江戸・東京の歴史と文化を伝える」というコンセプトは変わりません。よりバリアフリーに、よりインタラクティブに進化した新しい江戸博が、どのような驚きを私たちに提供してくれるのか。再開の日が今から待ち遠しくてなりません。
アクセス情報(Access Information)
所在地: 〒130-0015 東京都墨田区横網1-4-1 ※現在は休館中です。
公共交通機関
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JR総武線 「両国駅」西口より徒歩3分
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都営地下鉄大江戸線 「両国駅」A4出口より徒歩1分
周辺の観光スポット
江戸東京博物館のある両国エリアは、歴史と文化の香りが色濃く残る街です。博物館の再開を待つ間も、周辺散策で十分に楽しむことができます。
- 両国国技館 江戸東京博物館のすぐ隣に位置する、大相撲の聖地。本場所開催中は色とりどりの幟(のぼり)が立ち並び、太鼓の音が響き渡ります。相撲博物館も併設されており、相撲の歴史に触れることができます。
- すみだ北斎美術館 世界的な浮世絵師・葛飾北斎は、この本所割下水(現在の墨田区亀沢)付近で生まれ、生涯のほとんどを墨田区内で過ごしました。この美術館では、北斎やその門人の作品を多数展示しており、タッチパネルなどを使った最新の展示方法で北斎の世界を楽しめます。建築家・妹島和世氏によるスタイリッシュな外観も必見です。
- 旧安田庭園 江戸時代の大名庭園の面影を残す、潮入り回遊式庭園です。かつては隅田川の水を引いて潮の満ち引きによる景観の変化を楽しんでいました。現在はポンプで人工的に再現されています。都会の喧騒を忘れて静かに散策できる、癒やしのスポットです。
- 両国江戸NOREN JR両国駅西口直結の複合施設。「粋な江戸の食文化を楽しむ」をコンセプトに、寿司、ちゃんこ、天ぷらなどの老舗や名店が軒を連ねます。館内には実物大の土俵があり、江戸の情緒を感じながら食事を楽しむことができます。
関連リンク集(Related Links)
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江戸東京博物館 公式サイト (休館中の情報や、オンラインでの展示紹介などが更新されています)
