

破魔矢(はまや)はどこに飾る? 方角と飾る時期の基本ルール
初詣の帰り道、多くの人が手にしている「破魔矢(はまや)」。 新しい一年の幸運を願い、厄を払うために授与していただいたものの、家に帰っていざ飾ろうとしたとき、ふと手が止まってしまうことはありませんか?
「あれ? 矢の先はどっちに向けるんだっけ?」 「うちは神棚がないけれど、タンスの上でいいのかな?」 「袋から出して飾るの? それとも入れたまま?」
神聖なものだけに、間違った扱いをしてバチが当たるのは怖いもの。しかし、安心してください。破魔矢の飾り方には、現代の住宅事情に合わせた柔軟なルールと、押さえておくべき「核心」があります。
今回は、意外と知らない破魔矢の意味から、神棚がない家でのベストな飾り場所、そして毎年変わる「方角」の考え方までを徹底解説します。

第1章:破魔矢とは何か? そのルーツを知る
正しい飾り方を知る前に、まず「破魔矢」が持つ意味を理解しておきましょう。これを知ると、どこに飾るべきかが自然と見えてきます。
「魔」を破る聖なる武器
破魔矢は文字通り、「魔(=災い、邪気)」を「破る(=浄化する)」ための矢です。 古来より、弓矢には霊的な力が宿ると信じられてきました。平安時代の宮中行事「射礼(じゃらい)」という、弓を射て邪気を払う儀式が起源とされています。 本来は弓とセットで「破魔弓(はまゆみ)」と呼ばれていましたが、簡略化され、矢だけを飾る形が一般的になりました。
幸運を「射止める」縁起物
破魔矢にはもう一つ、「一年の好機を射止める」という意味も込められています。 つまり、破魔矢は「家に入り込もうとする悪いものを追い払うガードマン」であり、同時に「幸運を家に呼び込むアンテナ」のような役割を果たしているのです。
第2章:神棚がない! マンション・アパートでの飾り場所
昔ながらの日本家屋であれば神棚に飾るのが基本ですが、現代のマンションやアパートでは神棚がない家庭も多いでしょう。 「神棚がないと飾ってはいけない」なんてことはありません。以下の3つの条件を満たす場所であれば、神様はしっかりと家を守ってくださいます。
1. 大人の目線より「高い位置」
神様や縁起物は、人間が見下ろす位置に置くのは失礼にあたります。 タンスの上、本棚の最上段、あるいは鴨居(かもい)など、家族が立った時の目線よりも高い場所を選びましょう。
2. 清浄で明るい場所(リビングがおすすめ)
家族が集まるリビングは、家の中心であり、最も気が動く場所です。ここを明るく保ち、破魔矢を飾ることで、家族全員を守ってくれます。 逆に、トイレや洗面所などの「水回り」は、汚れが溜まりやすい場所とされているため、避けるのが無難です。
3. 玄関は「魔除け」に最適
玄関は、外から人だけでなく、様々な「気」が入ってくる入り口です。 ここに破魔矢を飾ることは、悪い気が家の中に入ってくるのを水際で防ぐという意味で、非常に理にかなっています。 ただし、玄関に飾る場合も、下駄箱の上など「高い位置」をキープし、靴の臭いや汚れが及ばないよう綺麗に掃除をしておくことが絶対条件です。

第3章:一番の悩みどころ「方角」の正解
「矢の先(矢尻)をどの方角に向ければいいのか?」 これは最も多くの人が悩むポイントです。これには大きく分けて2つの考え方があります。
基本ルール:矢の先は「南」か「東」に向ける
特定のお願い事やこだわりがない場合、最も一般的なのはこの配置です。
- 矢の先(尖っている方): 南 または 東
- 矢の羽(手元の方): 北 または 西
太陽が昇る「東」や、太陽が最も高くなる「南」は、陽の気が強い吉方とされています。また、神棚自体が南か東を向くように作られていることが多いため、それに合わせる形です。
上級ルール:その年の「凶」に向ける(=裏鬼門・凶方位)
風水や陰陽道の考え方を強く意識する場合、「その年に悪い気がやってくる方角(凶方位)」に矢の先を向けます。 「来るな!」と矢を構えて威嚇するイメージです。 その年の凶方位(五黄殺や暗剣殺など)を調べて飾るのは上級者向けですが、効果が高いとも言われています。
2025年・2026年の「恵方」を活用する場合
近年では「恵方巻き」のように、その年の福徳を司る神様がいる方角「恵方(えほう)」を意識するケースも増えています。 この場合、「恵方から来る幸運を射止める」と解釈するか、「破魔矢自体を恵方に向けて飾る(羽を恵方に向ける)」か諸説ありますが、神社本庁などの一般的な見解では、あまり厳密に方角を気にしすぎて粗末になるよりは、「清浄な高い場所」であることを優先して良いとされています。
【ポイント】 もし迷ったら、「矢の先を南か東に向ける」。これで間違いありません。
第4章:飾り方の「形」と注意点
立てるのか、寝かせるのか?
神社の授与所には、破魔矢専用の「矢立て」が売られていることもあります。もし手に入るなら、矢立てを使って立てて飾るのが最も美しい形です。 しかし、必ずしも立てる必要はありません。棚の上に横にして置いても問題ありません。
横に置く場合は、直接置くのではなく、白い紙(半紙や奉書紙)を敷き、その上に置くと丁寧です。 もし壁に掛ける場合は、市販のフックなどを使っても構いませんが、画鋲で破魔矢そのものを刺すようなことは絶対に避けてください。
ビニール袋はどうする?
授与された時に入っている透明なビニール袋。ホコリ除けのためにそのまま飾りたくなりますが、基本的には「袋から出して」飾ります。 神様(の宿るもの)をビニールで覆ったままにするのは、息苦しい状態と捉えられるからです。 ただし、絵馬がついている場合、絵馬は外さずにそのまま付けておきます。

第5章:いつから飾って、いつ返す?
飾る時期
基本的には、初詣で授与されたその日に飾ります。 もし年末に幸先詣(さいさきもうで)などで早めに頂いた場合は、大晦日までは大切に保管し、元旦になった瞬間に飾る、あるいは新年を迎える準備として大掃除の後に飾るのが良いでしょう。
処分(返納)する時期
破魔矢の効力は、お守りやお札と同じく「1年間」とされています。 翌年の初詣の際に神社へ持参し、「古札納所(こさつおさめしょ)」へ返納してお焚き上げをしてもらいます。 そして、新しい破魔矢を授与していただき、新たな年の守りとします。これを「常若(とこわか)」の思想と言い、常に新しい力を頂くことで運気をリフレッシュさせるのです。
違う神社に返してもいい?
原則としては「授与された神社」に返すのが礼儀ですが、遠方の旅行先で頂いた場合などは、近所の神社に返納しても問題ありません。 ただし、「お寺で頂いたものはお寺へ」「神社で頂いたものは神社へ」という区別だけは守るようにしましょう。
まとめ:大切なのは「敬う心」
破魔矢の飾り方について、方角や場所のルールをご紹介しましたが、最も大切なのは形式そのものではありません。
「我が家を守ってくださり、ありがとうございます」
そう思う敬意と感謝の心です。 どんなに完璧な方角に飾ったとしても、ホコリまみれで放置されていては意味がありません。逆に、多少方角がずれていても、毎日家族が集まるきれいなリビングで大切に見守られている破魔矢なら、きっとその力を発揮してくれるはずです。
今年の破魔矢は、ぜひ家族みんなが見える高い場所に、少しの背筋の伸びる思いと共に飾ってみてください。その一本の矢が、あなたの一年をより健やかで、清々しいものにしてくれるでしょう。
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